閉ざされた部屋の中で、時が止まったように感じていませんか?
孤独や不安を感じる日々は、決して珍しいものではありません。
実は日本には146万人もの人々が同じような状況にあります。
(出典:「ひきこもり」推計146万人 主な理由“コロナ流行”内閣府調査)
この記事では、実際の悩みと引きこもりの問題に対する専門家の見解、そこから立ち直るきっかけ、効果的な支援の方法をお伝えします。
引きこもりの原因は一つではなく、多面的に分析する必要があります。
表面的な症状の裏には、複雑な心理的要因が隠れていることも少なくありません。
ここから先のお話は、この複雑な問題を解きほぐす重要な第一歩となります。
焦らず、自分のペースで始められる方法を一緒に探っていきましょう。
この記事があなたの新しい一歩を後押しし、希望の光を見出すきっかけになることを願っています。
目次
引きこもりの原因と症状
引きこもりの原因は、一人ひとり異なります。
社会的要因、心理的要因、家庭環境など、様々な要素が複雑に絡み合っていることが多いのです。
例えば、学校でのいじめや職場でのストレスがきっかけで引きこもりになるケースがあります。
「高校時代のいじめがトラウマになって、人と接するのが怖くなってしまいました」という声も聞かれます。
また、家庭環境も大きな影響を与えることがあります。
過保護な養育や逆に厳しすぎる躾が、子どもの自立を妨げ、引きこもりの一因となることもあります。
一方で引きこもりの症状の一例として以下のようなものがあります。
- 外出を極端に避ける
- 昼夜逆転の生活リズム
- 家族とのコミュニケーション不足
- インターネットやゲームへの依存
- 自己肯定感の低下
「朝起きられなくなって、だんだん外に出るのが怖くなりました。家族と話すのも億劫で、部屋に閉じこもってスマホばかり見ていました」
こういった話は経験談としては比較的よく耳にしますが、引きこもりの原因を理解するには、多面的な視点が必要です。
一つの要因だけでなく、様々な要素が絡み合っていることを認識することが、適切な支援につながります。
引きこもりに悩む人たちのエピソード
では、引きこもりの状態にある人、またはその家族はどのようなことに悩んでいるのでしょうか。実際に医師の元に寄せられた相談事例を見てみましょう。
中学生の子どもが不登校に
中学生の娘について相談させてください。
今年の1月から学校を休みがちで、3月には終業式以外行けませんでした。
朝は起きられず、頭痛や腹痛を訴えていますが、その理由を一切話しません。
学校や周囲に確認しても、いじめなどの外的要因は見当たりません。
幼少期から剣道を習っていて、中学でもレギュラーとして活躍しています。
イベントには参加し、楽しんでいる様子も見受けられますが、ここ1カ月は学校にも稽古にも行っていません。
何か要望があるのか聞いても答えず、どう対処すればいいのか悩んでいます。
ネットで調べたところ、起立性調節障害の可能性があると思いましたが、午後も学校に行こうとしないため、違う問題かもしれません。
また、スマホ依存の傾向もあり、夜遅くまでYouTubeを見ています。
学校に行くと友達と遊ぶので、学校や剣道が嫌なのか分からず困っています。
本人が何を考えているのか話さないため、どう対応すればよいか教えていただけると助かります。
(女性|10代)
相談の詳細はこちら
中学生の子どもが不登校に。学校と剣道を避け、コミュニケーションも取れず対応に苦慮
この相談に対する医師の回答
不登校の原因を考える場合、素因(知能、発達、性格、身体、精神)、外因を考える必要があります。
強い剣道部にいて、友人とスマホをしているので、知能、発達、身体には、大きな問題はなさそうです。
若年者の性格は大半が未熟で、外因(いじめはなくても、強い運動部は、過酷・重圧が常態的)は多そうですので、何らかの適応障害が生じているかもしれません。
一度、診断能力の確かな児童専門の精神科を受診して、正しい診断と対処方法を熟知することは、お子様の人生にとって、有益と思われます。
なお、最寄の精神科医療機関の場所は、ネットで調べるか、役所・保健所・精神保健福祉センター・児童相談所等に、お問い合わせください。
児童精神科外来は、需要>>供給なので、予約待ちが長いのが実情です(数ヶ月程度)。
(回答医師:精神科・神経科)
引きこもりから脱出したい大学生です
高校入学後、朝起きることが極端に困難になり、遅刻や欠席が増加しました。
それに伴い成績が低下し、母親との関係も悪化しました。
母からの厳しい言葉に傷つき、家庭内の居心地が悪くなりました。
大学入学と一人暮らしを機に生活を改善しようと試みましたが、朝の起床困難は続いています。
過去の辛い記憶が蘇り、引きこもりがちになっています。
大学を退学したい気持ちもありますが、これまでの努力を無駄にしたくないという思いと、母親への申し訳なさから決断できずにいます。
現在の精神状態では人との接触が多い環境で働くことに不安を感じています。
夜になると不安感が強くなり、涙が出ることもあります。
この状況をどのように改善できるか、適切な対処法についてアドバイスをいただけますでしょうか。
(女性|10代)
相談の詳細はこちら
引きこもりから脱出したい大学生です。朝起きられず不安で悩んでいます。
この相談に対する医師の回答
おそらく、高校に進級するころの状態は、いわゆる不登校だったのではないでしょうか。
対人関係や学業成績などで、挫折体験をきっかけに、学校に対して強い不安、恐怖を伴う抵抗感を生じることがあります。
それが、不安反応として、さまざまな身体症状をもたらし、それが朝方、起きれないという状態だったのでしょう。
ケースによって微妙に異なるのですが、学校そのもの、同級生、特定の教科、教師などに対して強い抵抗感を感じるようになります。
そして、その発端となったトラブルが解決しても、その抵抗感は続きます。
それでも進級され、大学までたどり着いたのは、あなたがその苦しさに耐え抜いて達成できたことなのだろうと拝察します。
しかし、その問題が未解決のまま残されているように思います。
心は、三相構造になっているといわれ、表層から意識、下意識、無意識となっており、意識は現在思い浮かべていること、下意識は思い出そうとすると意識に上がってくること、無意識は努力しても思い出せない記憶の層です。
無意識の領域とは、意識すると辛い思いや葛藤や外傷体験の記憶などが保管されているとされる心の領域で、本人にとって「真に辛い思い」は無意識に隠されているともいわれ、それを抑圧といいます。
で、抑圧すれば影響がないかというと、そうもゆかずブロックをすり抜けて意識に影響を与え続けることがあります。
それが、現状の「引きこもり状態」をもたらしているのでしょう。
基本的な解決は、やはり、大学、学校への抵抗を乗り越えることにあると考えます。
大学の保健管理センターなどに相談されるとともに、薬剤的には、不安に強い効果のあるレクサプロ、セルトラリンなどSSRI系抗うつ剤とその効果を増強し、深層意識にも作用する、エビリファイ、ロナセン、ルーランなど非定型抗精神病薬をごく少量併用されると助けになると思います。(*)
その場合は、心療内科、精神科に相談されるとよいでしょう。
(*)医療機関での診察が必要であることを前提に、一般的な見解として医師は述べています
(回答医師:精神科・神経科)
引きこもりの状況は個々に異なり、原因や対処法も多様です。
まず、知能や発達、性格といった個人の特性(素因)や、家庭や学校環境などの外部要因(外因)を総合的に考えることが重要です。
また、心は意識、下意識、無意識の三層構造で成り立っており、無意識に抑圧された感情が引きこもりの要因になることもあります。
こうした多次元的な視点から問題を捉えるためにも、専門家と相談しながら適切な対処法を見つけることが有効です。
引きこもりからの回復には時間がかかることもありますが、適切な支援を受けることで、少しずつ前に進むことができるのです。
引きこもりから脱出できる人:特徴ときっかけ
引きこもりから脱出できる人には、いくつかの共通点があります。
- 自己理解:
自分の状況を客観的に見つめる力 - 小さな目標設定:
無理のない範囲で目標を立てる力 - 柔軟性:
状況に応じて計画を調整できる柔軟さ - サポートの受け入れ:
周囲の支援を素直に受け入れる姿勢
「今日は5分だけ外に出よう」といった小さな目標を立てて、少しずつ行動範囲を広げていくことが効果的だと言えるでしょう。
例えば次のようなことが、そのきっかけとなることがあります。
- 家族の変化:
両親が責めるのをやめて、ただ見守ってくれるようになったことで、少しずつ心を開くことができた。 - 趣味との出会い:
オンラインゲームで知り合った人と、共通の趣味について話すうちに、外の世界に興味が湧いてきた。 - ペットの存在:
保護猫を引き取ったことで、生活に責任が生まれ、少しずつ外に出る機会が増えた。 - ボランティア活動:
オンラインでのボランティア活動から始めて、徐々に対面での活動にも参加するようになった。
小さな変化や新しい興味が、大きなきっかけになることがあるのです。
回復への道筋と支援
引きこもりからの回復は、以下のように段階的に進めていくことが重要です。
- 段階的な社会との再接続
- 就労支援プログラムの活用
- 専門家のサポート
- 家族の理解と支援
- 再発防止策と自己管理
段階的な社会との再接続
- オンラインコミュニティへの参加
- 少人数の集まりへの参加
- 地域のイベントへの参加
最初は顔出しなしのオンライン交流から始めて、少しずつ慣れていくことで、対面での交流にもスムーズに移行できる方が多いようです。
全国にはさまざまな支援機関や相談窓口がありますので、まずはお近くのひきこもり支援機関を探してみてください。
就労支援プログラムの活用
- 職業訓練プログラムへの参加
- 短時間勤務からのスタート
- テレワークの活用
まずは短時間の在宅ワークから始めて、徐々に勤務時間や業務内容を増やしていくアプローチが効果的です。
焦らずに、一人ひとりのペースに合わせて支援を行うことが大切です。
専門家のサポート
- 定期的なカウンセリング
- グループセラピーへの参加
- 必要に応じた医療的サポート
継続的な支援が重要で、調子が良くなっても定期的なフォローアップは必要です。
家族の理解と支援
- 家族向け学習会への参加
- 家族同士の交流会
- 家族療法の活用
「家族が変われば、本人も変わる」という言葉があるように、家族の対応が変わることで、本人の変化のきっかけになることがあります。
再発防止策と自己管理
- ストレス管理技術の習得
- 生活リズムの維持
- 趣味や興味の継続
ストレス解消法を見つけたり、規則正しい生活リズムを維持したりすることで、再び引きこもりに陥るリスクを減らすことができます。
まとめ
最後に、引きこもりで悩んでいる方々へのメッセージを添えたいと思います。
あなたは一人ではありません。
多くの人が同じような悩みを抱え、そして乗り越えてきました。あなたにも必ず希望があります。
小さな一歩から始めて、自分のペースで前に進んでいってください。
そして、困ったときは遠慮なく周りの人や専門家に助けを求めてください。
最近では、オンラインでカウンセリングを受けられるサービスも増えています。
自宅にいながら専門家に相談できるので、外出が難しい方にとっては特に有効な選択肢かもしれません。
あなたの未来には、きっと素晴らしい可能性が広がっているはずです。
一歩ずつ、その可能性に向かって歩み出す勇気を持ってください。